ADHDの子は罰に対して感受性が高い? 〜研究結果を現場に落とし込んでみる〜

ADHD(注意欠如多動症)の研究
今回は沖縄科学技術大学が行なったADHDに関する研究を紹介します(^ ^)
(参考→ADHD – 罰に対する高い感受性を日本の子どもでも確認)
この研究では、普通のゲームと、普通より4倍多く罰(失敗)が与えられるゲームが使われました。
そして、ADHDのある子と無い子で、罰(失敗)に対する反応に違いが出るのかを実験しました。
その結果、
- ADHDのない子は、罰(失敗)の量にかかわらずゲームに取り組む
- ADHDのある子は、罰(失敗)の多いゲームよりも、罰が少ないゲームに多く取り組む
という結果が得られました。
また、ADHDのある子は、罰(失敗)を与えられた後に、ゲームを再開するのに時間がかかりました。
これは、ADHDのある子は、罰(失敗)に強く感情の反応が示したことが予想されます。
現場の感覚
「ADHDの子は失敗することに拒否反応を示す」という事実は、現場の感覚でなんとなく感じている人はいると思います。
- ドッチボールの時に勝敗に過度にこだわる
- 丸付けで罰をつけたら嫌がる
- 勉強がわからないとすぐ諦める
これらの行動は日本では「根気がない」「意気地が無い」など悪い印象で捉えられます。
「ガマン」を美徳とする日本では特に悪い評価につながります。また、改善しようとお説教をして考え方を変えようと試みる方もいるでしょう。
しかし、そもそも「失敗に対する耐性が低い」という特性があるのであれば、その子にとって「やらない」ではなく、「できない」と認識が変わります。
そして、心の問題ではなく配慮をして参加しやすいよう手立てを整えようと、前向きに考えることができるようになるでしょう。
現場での応用
これらの特徴を前提として支援を考えると、例えば、
- 個別の学習支援のときに、より失敗が少なくなるようスモールステップを意識する
- 問題を解くときは、わからない問題をすぐに確認できるよう解答も一緒に準備させる
- 忘れ物で失敗することがないように、学校に置いておける教科書や道具を増やす
など具体的な支援の発想につながります。
「心の問題」と思うのではなく、その子のもっている「特性」と発想の転換ができれば、様々な現場の工夫が生まれるでしょう。
終わりに
これらの研究結果を実際に使うのは、我々現場(臨床)の人間です。特に福祉・教育の対人支援職は、人材の質が大きく作用します。
だから、現場の人が、役に立つのか?実感とは異なるのか?など意識して使うことで、より質が高い支援にも繋がります。
日々新しい情報をキャッチして、楽しい現場ライフを楽しみましょう(^ ^)
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※第2版がでました(^ ^)
Comment
質問なのですが、ADHDの子供がトランプをしている時に負ける(負けそうになる)とイライラし始めます。そういうときはわざと自分が負けたり、ADHDの子が有利になるようにゲームを進めるのが正解なのでしょうか?そうは思わないのですが、毎回悔しそうにしてしまっているのでどうすべきかわかりません…。
コメントありがとうございます。
その子の実態によりますが、私はそのような子には、わざと負けます。また、その子にかかわらず基本的に子どもと勝負をするときは手加減をして負け越すようにします。
理由は、そもそもトランプなどのゲームは「楽しむ」ということが目的で、勝敗にこだわることは目的ではありません。しかし、勝敗にこだわってしまう子は、そもそも「勝つ」という経験不足と、負けたときにどうすれば良いかわからない、という実態を多くのケースでもちます。
なので、まずは大人は負けて子どもに勝つ経験を積ませる。同時に大人が負けても楽しく遊ぶという姿を見せることで、子どもに「楽しい負け方」を教えます。これは言葉ではなく実際に大人の楽しむ姿を見せることが効果的です。
私はこのように考えて子どもに接しています。