スモールステップで教える方法と、子どもの意欲を生かして教える方法どちらが良いか? 〜トップダウンとボトムアップの違いを考える〜

2つの教え方
勉強を教えたり、スポーツを指導をされている方は、「どう教えれば一番良いか?」という悩みを必ず持っていると思います。
そして、教え方には大きく2種類の方法があります。
1つは、基礎的な技能をコツコツと積み重ねて、難易度の高い応用技能を習得していくボトムアップ型の教え方。(スモールステップ、過程指向型アプローチとも呼ばれます)
もう1つは、本人が興味・関心のある技能を遊び的な感覚で行い、応用と一緒に基礎技能も高めていくトップダウン型の教え方。(課題指向型アプローチとも呼ばれます)
皆さんは、どちらの方が効果があると思いますか?(^ ^)
2つの特徴
それぞれの教え方には特徴があるので、簡単にまとめてみます。
◆ボトムアップ型
下から教えるボトムアップ型の教え方が効果的なものはいくつかあります。
その中で、代表的なものは「算数・数学」です。
足し算、引き算、掛け算、割り算の計算技能を下から積み上げて、数学的な見方考え方を高めていきます。
トップダウンでも鍛えることもできますが、個々の考え方・定義・公式が明確な分、下から1つずつ積み上げた方が有効ですし、成長している実感が得やすいと言えます。
◆トップダウン型
一方、意欲にアプローチするトップダウン型が効果的な指導の代表は「体育・運動」です。
例えば、自転車に乗るにはバランス感覚を始め、基礎的な運動技能が複数必要です。当然、すぐに乗れません。しかし、「乗れるようになりたい!」と練習する内に、多くの人は乗れるようになります。
その際に、バランス感覚など基礎的な技能も同時に鍛え高めることができるのです。
ちなみに、自転車もボトムアップ型の教え方は可能です。例えば、バランス感覚を鍛える運動としては「片足立ち」「平均台」等あるので、ある程度鍛えてから自転車練習に入る方法もあります。
しかし、「自転車に乗りたい!」という子に「まず『片足立ち』から」と言ってもなかなか意欲もでませんし、継続も難しいです。
このように、「体育・運動」分野においては、意欲を生かしたトップダウン型が有効なケースが多いと言われています。
両方の教え方を取り入れる
ボトムかトップか?と言いましたが、実際の指導では明確に分けられるわけではありません。
例えば、算数でも応用問題を通して基礎的な技能を高めたり、体育・運動でも筋トレをして基礎的な能力・技能を高めて、競技のレベルアップを狙うこともあります。
要は、目の前の子どもにとって「どちらが成長するか」を指導者は考える。
そして、子ども自身に「『どちらを選択すれば自分は伸びるのか』を考える力」をつけることが大切だということです。
例えば、国語では、漢字、熟語、文法、読解の視点などの基礎技能をボトムアップで積み上げていく指導は大切です。一方で「読みたい本を読む」「書きたい物語を書く」など、子供自身の意欲をもとにした言語活動も、結果的に基礎技能の向上につながります。
その時に「文章読解が苦手」という子がいた場合、
- 「だから、まず漢字や文法の勉強をする(ボトムアップ)」
- 「まずは好きな本をたくさん読んで、文章に慣れる(トップダウン)」
と、2つのアプローチを選択できる力をつけることが大切ということです。
終わりに
今回は、2つのアプローチを紹介しました。
学校で考えると、教科書会社の指導書掲載の授業では、この2つをバランスよく配置している授業が多いです。しかし、実際に目の前の子どもの実態は異なるので、ボトムアップとトップダウンの時間をどう配分するかが重要になります。
日本は伝統的に学習指導要領をもとにしたボトムアップ型の指導に強い国と言われます。
一方で、最近は、子ども自身の意欲をもとにしたトップダウン型の方が子どもの成長が早いと言われています。これは、「ICT機器を活用した個別最適化の学習」の実施ハードルが下がったことが要因かと思われます。
しかし、実際に現場にいると、そこまで綺麗に別れるものではありません。
算数、体育など比較的、明確な教科であれば良いですが、国語、理科、社会等どちらの要素も一定以上必要となる教科では、学習内容に応じて、使い分けられるようになりたいですね(^ ^)
以上、参考になれば幸いです!
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