不登校の実態とゆとり教育 〜中学校の不登校は約44万人?〜

コロナウイルスの拡大による影響
コロナウイルスが拡大する中、教育現場は一斉休校など緊急の対応に追われ忙しいと思います。
同時に、子どもたちのICT環境の整備の遅れも如実に現れ、非常時における学びオンラインによる授業の重要性が周知されたとも言え、改めて「学校の存在意義」を考える機会となりました。
特に、オンライン環境があれば授業を進められる子どもたちの存在も浮かび上がり、不登校の児童生徒たちへの支援環境も広がるのではないかと言われています。
不登校の実態 〜文科省のデータ〜
参考HP:文科省『平成 30 年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について』(令和元年10月17日)
「不登校問題」は、長年の教育課題です。
そして、不登校児童の数は平成30年度の時点で16万4,528人と、過去最高を更新しています。
また、
- 小学校では、約645万人中2万3千人(0.7%)
- 中学校では、約330万人中12万人(3.6%)
と中学校では30人クラスには1人以上不登校の生徒がいることになります。
なお文科省は不登校の定義を「年間30人以上欠席した児童生徒」としており、
- 保健室登校などの別室登校の子
- 30日未満だが遅刻、早退などを繰り返して授業にはあまり参加していない児童生徒
はカウントされていません。
公益財団法人日本財団の調査によると、文科省データに反映されない不登校傾向のある子は、中学生で約33万人いると言われています。
参考HP:『不登校傾向にある子どもの実態調査』(2018年12月12日)
このようなデータの見方には、様々な意見もありますが、シンプルに中学生の44万人(不登校10万人+不登校傾向33万人)が、「学校に行きたくない」と思っているという事実があるということは抑えておくべきでしょう。
文科省の新方針
このような中、文科省は令和元年10月25日「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」を出しました。
その中で「不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方」の冒頭で、このような通知が行われました。
(1)支援の視点
不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、」という言葉は、今まで学校に戻すことを目指していた不登校対応から、フリースクールや不登校特例校などの外部の学び場や、自宅学習も校長判断で出席扱いにするなど、学校に囚われないその子にあった学びの場を重視するという教育観の変遷を示しました。
もちろん、現時点で学校外の学びの場が整備されていない、というのは大きな問題ですし、自宅学習に関しても、学習困難にある子の逃げ場がなくなるという意味で不安視する人もいます。
しかし、現場の課題を解決するために、少しずつでも条件整備が進むのは良いことだと思います。
ゆとり教育との関係
他にも、不登校には学力が関係していると言われます。
発達障害の中でも、LD(学習障害)を抱える子は4.5%とASD、ADHDと比べて多いです。また、LDではなくとも、授業についていけなくなった結果、学校からドロップアウトし不登校になる子は昔から多いと言われています。
そのような中、先ほどの文科省のデータを見ると、実は不登校の状況が改善している期間があります。(↓)
それが、2002年(平成14年)〜2012年(平成24)の期間です。実は、この期間は「ゆとり教育」と呼ばれ、学習内容の削減が行われた時期と重なります。
そして、「脱ゆとり」を目指した学習指導要領が開始するとともに、不登校は増加に転じています。
もちろん、このデータも人によって解釈が変わります。
経済、家庭環境、文化、思想的な変化も影響しているのかもしれません。
しかし、「学習と不登校」という関係性を意識すると、結果的に授業の改善や学習支援の重要性を考えるきっかけになるのではと思っています。
終わりに
不登校の問題が広まると同時に、フリースクールの拡大や、困難のある子を対象とした特別な公立高校の設立など、新しい教育のあり方を進めます。
学校に行くことが全てという時代ではありません。
子どもにとって最も学びが深められる場所を大人が作り、そして子ども自信が選べる世の中にしていきたいですね(^ ^)
以上です!
(参考書籍)
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