ADHD(注意欠如多動症)の子どもへの接し方 〜具体的な困難と対応方法〜

目次
ADHDの子は大変?
- 注意してもすぐに同じことをする
- 時間を守らないで遅刻をする
- すぐに散らかして片付けない
ADHDの子どもは、学校や子育てで何かと悩みのタネとして話題に上がります。
- 行動力がある
- 集中力がある
などいい面もあります.
しかし、目の前でトラブルを起こされると大変な経験をしてしまうのは事実です。
ADHDの特徴とその原因
特徴として、
- 不注意
- 衝動性
- 多動性
が知られています。
そして特徴が生まれる原因の理由として
- 実行機能の弱さ
- ワーキングメモリが低い
という特徴があります。
◆実行機能の弱さ
実行機能とは、情報を入手してから行動に移すまでの情報処理の力です。
人は考えて行動に移すまでに、
- 我慢した方が良いかな?
- これは優先した方が良いな?
など正しい行動を選びながら動きます。
しかし、実行機能が弱いと深く考えず行動に移すことになります。
「よく考えて行動しなさい!」と言われる原因になります。
◆ワーキングメモリの低さ
ADHDの人にはワーキングメモリが低いという特徴もあります。
これは、簡単に言えば短時間に複数のことを覚えておく記憶力のことです。
ワーキングメモリのおかげで、同時に色々考えながら動くことができます。
社会人は仕事を同時並行で進めなければいけない場面が多いので、ワーキングメモリの力が活躍します。
しかし、ADHDの人はワーキングメモリの低さからミスを重ねてしまい、「何度言えばわかるんだ!」と叱られてしまうパターンが多いです。
結果「大人のADHD」と診断される人が最近は増えています。
具体的なトラブルにつながるADHDの行動特徴
上記のADHDの特徴はありますが、これは悪いことではなく本人の特性です。
しかし、実際に対人関係の中でトラブルにつながりやすい行動特徴が3つあります。
①決めたことを守れない
衝動的に行動するので、先生や友達との約束を破ってしまうことが多いです。
また、忘れてしまうというパターンも多いです。
②自分の行動を振り返ることができない
ワーキングメモリの低さがあるので、トラブルの後に「何があったの?」と聞いても正しく振り返ることが苦手です。
振り返りが苦手だと、似たような場面で同じ失敗をしやすくなってしまいます。
また、衝動性から嘘をついてしまう場合もあるので、振り返りが行動の改善にならず悪化してしまうケースもあります。
③我慢できない
衝動性多動性から、我慢ができないという特徴があります。
決められた行動ができないので、
「◯時まで勉強したら、おやつあげるからね」
と言っても、
「今ちょうだい!勉強頑張るから!」
と我慢ができません。
諦めて先におやつをあげて勉強させると、気づいたら勉強を投げ出してゲームをしていたりします。
当然、叱られることになりますが、本人も考えて行なっている訳ではないので、失敗体験を積んでいくことになります。
具体的な対応の手順
そんな特徴のあるADHDの子に対して、どう対応していけば良いのか具体的な対応を紹介します。
大事なことは、一度に全てを変えるのではなく、できるところから少しずつ変えていくことです。
①スモールステップを駆使した「できる&褒める」
上記で「◯時まで頑張ったら、ご褒美をあげる」という手は失敗する、という例を書きました。
しかし、この手順をスモールステップにすることで有効な支援になります。
例えば、
「◯時まで勉強したらおやつの時間」→「1問解けたらポテチ1枚」
「算数の授業を頑張ったら褒める」→「席についたら褒める、準備したら褒める、めあてを書いたら褒める・・・」
など、行動とご褒美を細分化します。
スモールステップで行動とご褒美を繰り返すことで、
- 行動が継続し定着する
- 成功体験が積み重なり自己肯定感が上がる
- 良い体験をさせてくれる支援者の信頼獲得
という正のスパイラルが生まれます。
②良い行動を増やす
良い行動が続けると習慣として定着させることができます。
この時に大事なことは、
良い行動が増える = 悪い行動が減る
ということです。
1日は24時間なので、良い行動を増やした分だけ悪い行動の時間は減っていきます。
支援者が①を続けることで、良い行動に注目した分、悪い行動が減っていくのです。
無理に悪い行動を見て、叱ったりする必要がない分、支援者の心理的にも負担の少ない方法です。
③行動の振り返り
ワーキングメモリの課題があるので、自分の行動を振り返ることが困難です。
しかし、トラブルがあった時は正しく思い出してもらう必要があります。
トラブル解決には、絵と発言を書いていき図にすることで、手がかりが増え思い出すことができるようになります。
まず、子どもの言い分を一人ずつ聞きます。
この時に「何があったの?」と大雑把に聞くと混乱して答えることができません。
「最初に話したのはどっち?」など場面を限定して聞くと思い出しやすくなります。
場面ごとに流れで確認していくので、手がかりが増えてADHDの子でもよく思い出してくれます。
そして子どもに見られないよう絵にしていきます。
この時、会話を時系列的に並べて記録すると、矛盾点やおかしな箇所がよくわかります。
(私は上のイメージ図のように記録しています。LINE会話法と勝手に呼んでます(笑))
また絵で見せると、嘘をついたり、その場しのぎの言い逃れも視覚化されるので、嘘をつくこともなくなります。
このように客観的に振り返る経験を積むことで、その子自身が気をつけることを理解し行動できるようになります。
④目標を決めて達成させる
①〜③で良い行動の積み重ね、支援者の信頼獲得、客観的な判断力
などをつけていくと、自分で決めた目標に対して自分の意思で達成することにチャレンジさせます。
その時に「苦手な部分を人に助けを求める」というステップが踏めることが重要です。
ADHDの人は得意不得意がはっきりしています。
だから「これは助けてもらおう」と自分から支援を求めることができるスキルが重要になります。
この時「自分が周りと同じようにできない」という引け目から人に助けを求めることができないことが多々あります。
なので「これは人に助けてもらおう。その代わり得意なことで助けてあげよう」というWIN-WINの心構えを持たせることが大切です。
平等な関係ということを意識すると、困った時に支援を求めやすくなります。
終わりに
ADHDの子は素晴らしい可能性を秘めています。
しかし支援者は日々どう対応して良いかわからず、疲れてしまうケースも多いです。
私自身も毎日試行錯誤をしながら少しずつ有効な方法を模索しています。
ぜひこのような支援は有効だった、という方法を共有していければと思います。
どんな子も自分らしく成長できる環境をつくっていきましょう(^ ^)
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