愛着障害の子への10の対応①

「愛着」とは
愛着とは「養育者との安心感・安全感を基盤とした心理的な結びつき」と言われます。
この「愛着」が形成できてないために、様々な課題が引き起こされます。
抑えておきたいことは
「愛着障害」=「親が育児をサボっている」とは限らない
ということです。
- 発達障害
- 適切なサポートの不足
- 貧困
様々な理由があります。
犯人探しをしても意味はありませんので、教師・学校という立場でできる最善の行動を探っていくことが重要です。
今回は私が実践してきた「愛着障害」の子への10の対応を紹介します。
①かまう
愛着障害は、「愛着」が形成できていないことで起こります。
なので、養育者の代わりに教師と関係を築き「愛着」を形成することで、心理的な基盤ができ行動が安定します。
これは、養育者以外でも、例えば夫婦間で「愛着」を形成し直すことができることが知られています。
「愛着」は、乳児期の頃から、
- お腹が空いた→ご飯をくれる
- ウンチが出た→オムツを替えてくれる
- 悲しいことがあった→抱きしめて、撫でてくれる
- 新しいものを見つけた→教えてくれる
- 危険なものを見つけた→守ってくれる
などの
- 「嫌なこと」を取り除いてくれる
- 一緒にいて安心できる存在である
という体験を積み重ねて、形成されます。
具体的には
「目を合わせると安心する」
という関係までいけば、愛着が形成されるそうです。
これは教師も同様で、愛着障害の子に関してはとにかく
「かまう」
というのが大前提です。
以前、下の記事で応用行動分析を紹介したときに、「無視をする」という対応を書きました。
基本的なスタンスは同じですが「愛着障害」の子に無視は、愛着形成が遅れる可能性があります。
なので、多少悪い行動でも、悪い言葉遣いをしても、叱らずかまってあげることの方が重要です。
もちろん、指導が必要な場合はあります。
しかし、適切にかまってあげることの方が、子どもの「愛着」も満たされ、問題行動も減るのでより有効かと思います。
②授業で活躍させる(活躍する場をつくる)
愛着障害の子は授業中に、
「ほらほら!」「できたよ!」
といわゆる「見て見て行動」をすることがあります。
小学生であれば、多くの子に見られますが、愛着障害の子は、周りの目を気にしない、不適切な状況でも教師によってくる、など過度な行動が見られることがあります。
なので最初から授業に「その子を活躍させる場面を作っておく」方が簡単かと思います。
学力が高ければ自然と活躍しますが、そうでない場合、私は簡単な発問を複数用意し授業で当てる、などして活躍場面を作ったりしています。
③握手効果
愛着障害の子は先生にベタベタとくっついて来ることが多いです。
スキンシップには、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」や「オキシトシン」など、子どもを安心させ、脳の発達を促す効果があります。
なので愛情が不足すると、子供は自然と安心感のある人へスキンシップをしに行きます。
これは、愛着障害の子に限らず、低学年などでは突然不安に駆られて、スキンシップを求める子は多くいます。
しかし、先生にベタベタするのを許すと、子どもたちが過度に甘えだしたり、他の先生にも抱きついたりすることがあるので、学校では基本「先生にベタベタくっつかない」がルールかと思います。
よって、スキンシップの代わりになり、かつ見た目がベタベタしているようには見えない対応が必要です。
私のオススメは「握手」です。
「握手」も「オキシトシン」や「セロトニン」が発生し、かつ笑顔が自然に生まれます。「握手効果」という言葉もあります。
授業で不安な様子があったり、休み時間によって来たら、「握手」をしながらかまってあげると、効果的です。
これは普段のクラス経営でも「握手鬼」「鍋鍋底抜け」「握手しながらペアトーク」など、「握手」を取り入れた取り組みは、子ども同士の距離感を縮めて、笑顔が多いクラスになるのでオススメです。
④柔らかな声かけ
教師は時に、声を張って子どもに伝わる通る声が必要になります。
しかし、怒ったような声、ヒステリックな声になると子どもの不安が増します。
特に虐待、DVの可能性がある家庭の子は、フラッシュバックなどの可能性もあります。
柔らかい優しい声を子どもに届ける意識が大事です。
⑤共感する
愛着障害の子には過度に良い子である場合があります。
これは虐待、DVがあった家庭では、良い子でないと養育を受けられない、という過去に由来するものです。
例えば、
- 他の子の問題行動を先生に全て報告にくる
など、先生が困らないことを第一に考えて行動してしまいます。
その他にも
- 痛くても泣かずに我慢する
- いじめられてもヘラヘラしてしまう
などの行動が見られる場合もあります。
「痛くても泣かずに我慢する」
これは、状態としてはかなり悪いと言えます。
通常、怪我をした時は「痛い」と養育者に泣きついて、「痛かったね」と共感してもらって、体と心の状態が一致していきます。
その他、悲しい、悔しい、などのマイナスの体験は全てこのような経験を経て、心と体が一致して来ます。
にもかかわらず、体は「痛い」と感じているのに、心や頭では「痛い」とは言えないのです。これが続くと体と心の認識が離れて解離状態となり、
「怪我をしても痛みを感じない」
「他人の痛みがわからない」
などの社会的不適応を起こしてしまう可能性があります。
さらに「いじめられてもヘラヘラしてしまう」と言うのは、
「いじめ」行動に対して、泣いたり、文句を言ったりする経験が許されなかった、と言うことです。
これは教師の対応も大きいと思いますが、通常は、
「嫌な体験」
→「愛着関係ができている人に泣いたり、慰めてもらう」
と言うプロセスを体験します。
この適切な経験があるから、いじめがあっても誰かに相談し、解決することができます。
「ヘラヘラする」
と言うのは、
「嫌なことは堪えるもの」と学習している
ので状態としては危険と言えます。
なので
教師は、子ども達の嫌な体験に関わる経験はしっかり共感して、言語化して、受け止めましょう。
「痛かったね」「悲しかったね」「イライラしたんだね」きちんと、共感し、受け止めた上で、解決にもっていきましょう。
たまに、悪口を言われてイライラしている男の子に、
「イライラしないの!あなたもやったんでしょ!」
と受け止めずに我慢を教えてしまう先生がいますが、
これは、「イライラした」と言う体験を損失し、嫌なことは我慢をする、と覚えてしまうので、対応としては最悪と言えます。
終わりに
今回は1〜5までの紹介でしました。
6〜10に後半は以下になります。
参考になれば幸いです(^ ^)
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