自閉症のこだわり行動への対応 〜関係欲求と成長欲求の逆転〜

自閉症のこだわり行動
自閉症を抱える子には、
- 時刻表が好き
- 国旗をすべて暗記する
- ミニカーを一列に並べる
など、特的のものに強い興味・関心を示す「こだわり行動」という症状がみられます。
好きなものがあるのは良い、でも別のものにも興味をもって欲しいな〜と思う親御さんも多いと思います。
あるいは支援者も、一人だけ別の遊びをしているので、なんとか一緒に遊ばないかと誘ってみますが、どうにも誘いにはのってくれない。
今回は、このような「こだわり行動」の強い子に対するアプローチを紹介します。
前提
前提として、こだわりを取り上げるのはアウトです。
ミニカーで遊んでいる子からミニカーを取り上げて、「こっちでみんなとトランプをしよう!」と誘えば、パニックになるのは予想がつくと思います。
あるいは、強いストレスに晒され、二次障害で行動が悪化することも予想されます。
「こだわり行動」は、わがままでもなければ、誰かを困らせるためにしているわけでもありません。
こだわり行動は、むしろ強みと考えて行動しましょう(^ ^)
具体的な対応
以下で、私がこだわり行動が強い子に対して、よく行うアプローチを紹介します(^ ^)
①一緒に遊ぶ
最初は、「こだわり行動」をしている子と一緒に遊びます。
- 電車で遊ぶなら、隣で電車で遊ぶ
- LEGOで遊ぶなら、隣でLEGOをする
- ペーパークラフトが好きなら、一緒に作る
- ウルトラマンのごっこ遊びが好きなら、隣でウルトラマンで遊ぶ
とにかく、彼らと一緒に遊びます。
(これは1回だけでなく何週間、何ヶ月の単位です)
②想いを満たす
そうして一緒に遊んでいるうちに、次第に
「これやろ!」「見て!すごいでしょ!」
と積極的に関わってくる様子が見られます。
あるいは、「先生!ペーパークラフト作って!」と言って、他の友達と遊びに行くこともあります。
現れ方は異なりますが、こだわり行動への想いを支援者が満たすことで、自分だけ世界から飛び出して、周りの人に関わり始めるのです。
③提案する
「こだわり行動」への想いが満たされると、支援者側からの提案も受け入れてくれるようになります。
例えば、昆虫が好きな子がいたので、1ヶ月間大好きな昆虫の動画を見ていました。すると、ある日「もういいや」と言ったので、私が「みんなとLEGOやってくる?」と聞くと、「やる!」と言ってLEGOに加わって友達に話しかけるようになりました。(LEGOで作るのは、当然虫ですが笑)
ポケモンのペーパークラフトが好きな子と数ヶ月間一緒に作っていると、ある時「先生作ってよ!」と言ったので、「じゃあ、みんなとトランプしてくる?」と聞くと、「うん!」と言って遊び始めました。
(その後、私がポケモンを作っている間は、周りの子に積極的に話しかけて遊ぶようになりました。)
時間はかかりますが、結果的に「こだわり行動」が減り、周りの人へ興味を示し始めます。
なぜ、想いが満たされるとこだわりが減る?
人間には色々な欲求がありますが、大きく分けると
- 生存欲求(睡眠、食事、生理的行動)
- 関係欲求(親しい人との人間関係)
- 成長欲求(自己成長、他者貢献)
の3つに分けられると言われます。(ERG理論参照)
多くの人は、
生存欲求→関係欲求→成長欲求
の順番で変化していきます。
しかし、自閉症の子は、
生存欲求→成長欲求→関係欲求
の順で変化するケースが多いです。
(これは、具体的なメカニズムがあるのですが、説明が大変になるので今回は省略します)
よって、こだわり行動を変えようとするのではなく、まず、こだわり行動への欲求を満たしてあげることで、次の関係欲求に目がいくようになるのです。
終わりに
自閉症をはじめとした発達障害を抱える子は、その特徴的な行動がゆえに、周囲から浮いてしまったり、理解されずに過ごしてしまうことがあります。
よって、まずは彼らの特性を理解し、受け入れることが大事です。
そして、その子にとって何が一番良いのかを探っていく活動こそが重要になります。
参考になれば幸いです(^ ^)
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