合理的配慮事例:ノートを書かない子への対応

ノートを書けないCくん
私のクラスにノートを書けない子(Cくん)がいました。
4月、授業中ノートを書く気配がありません。
書き始めても手がほとんど動きません。
前年度の担任に聞くと、
- 「やる気がない子」
- 「すぐ他のことに興味を持って集中しない」
- 「厳しく指導した方がいい」
とのことでした。
観察と気づき
とりあえず1週間Cくんの様子を見てみました。
Cくんのノートを見ると、板書はほぼ書いてませんが、授業の感想は書けていました。
しかも、字も普通で内容も十分書けていました。
そこで、書くときと書かないときの違いを調べると、
「黒板の板書をノートに写すことはできない。しかし、自分の意見は書ける」
ということに気づきました。
なぜこうなるのでしょう?
仮説立て
Cくんの様子を見て
「視覚的ワーキングメモリ(作業記憶)が弱いので、黒板の字を見てもノートを見るまでに忘れてしまうのではないか」
という仮説を立てました。
子どもの中には見たものを覚えておく力が弱く、すぐに忘れてしまう子がいます。
黒板を見てもノートを見るまでの間に忘れてしまうのです。
一方、自分の意見は頭で構築して書くので、何かを見て書く必要はありません。
自分の意見が書けるのは「見て覚える」という過程がないからだと予想しました。
対応策
対応策として、
- 板書する前に「〜と書きます。」と言う
- 板書後、机間巡視しつつCくんの近くで「〜と書くんですよ。」と繰り返し言う
をすることにしました。
これはCくんの聴覚のワーキングメモリが通常であるなら、私の言葉を覚えることでノートに書くことができるのではないか?と考えたからです。
そして対応後は、見事Cくんは普通に書き始めるようになりました。
そして慣れると、周りの子と同じように書けるようになりました。
その後
こうしてCくんは、ノートを書くことができるようになりました。
漢字の広場の授業でも、クラスでトップの文を書くようになりました(^ ^)
書いた作文や課題はみんなの見本となるほどで、本人も書くことが楽しい様子でした。
振り返り
今回は子どもが不得意な視覚的なワーキングメモリを、得意な聴覚ワーキングメモリでカバーすることができました。
「黒板に書く前に書く内容を発言する」というのは一見やっていそうなことです。
しかし、振り返るとできていなかったことがわかり反省しました。
以後、情報は視覚情報と聴覚情報を必ず同時に掲示することを意識するようになりました。
また、
動作化や空書きなど体を動かし体感覚で理解する
なぞる、触るなど触覚で理解する
など、できるだけ多様な感覚で理解できるよう授業内容を意識するようになりました。
Cくんのための合理的配慮でしたが、それはクラス全員のためになったのです。
終わりに
視覚と聴覚にもそれぞれワーキングメモリ(作業記憶)が存在し、子どもによって得意不得意があります。
しかし中には学校生活に困難が発生するレベルで苦手な子もいます。
しかし、その子の不得意で出来ないとは想像できず「やる気がない子」と判断されてしまうことは多くあります。
その結果、怒られて自信喪失する子もいます。
しかし、知識を持つことで間違った判断も減り、子どもの成長に繋げられます。
先生の不安やイライラもなくなり、ストレスも減ります。
知識は、子どもを守り、先生自身も守る盾になります。
そんな知識を得るために、私は学び続ける先生でありたいと思います(^ ^)
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