良い授業は遅い子を待たない 〜授業についてこれない子への対応〜

目次
行動が遅い子
「行動が遅い子がいて、困っています。」
と言う相談を受けました。
- 指示をしても動かない。
- すぐ気を抜いて動きが止まる。
- 待っている子が不満が溜まって文句を言う。
どのクラスにも周りより行動が遅い子はいますので、多くの先生が抱えている問題とも言えます。
遅い子を待たない
状況によって対策は変わりますが、良い方法として「遅い子を待たない」があります。
「行動が遅い子を、みんなで待って支えてあげる。」一見、とてもいい関係です。
しかし、これは真面目に行動している子に、我慢と負担を強いる、ということです。
その子をクラス全体で受け入れ、認める心を子ども全員がもっているのであればいいです。
しかし毎日遅い子のために待たされると、通常子どもは悪い感情を抱きます。
もちろん、遅い子をフォローする気持ちは大事ですが、長時間我慢することまで子どもに求めることはできません。
メリット
一方「遅い子を待たない」にはメリットが3つあります。
①真面目な子に負担がかからない
クラスの7〜8割は、指示を聞いて真面目に行動してくれる子です。
しかし、一部の遅い子を待つと、反対に7〜8割の子に負担がかかります。
準備はできているのに、先生から「待ちなさい」と言われ、喋ったら「静かにしなさい」と言われ、いいことはありません。
もし多くの子が先生に不満をもてば、学級崩壊にも繋がります。
よって、遅い子は待たず授業は進めることが重要です。
②クラス全体のスピードが向上する
遅い子はどんどん進むので、急がざるを得ません。
最初は遅くても、徐々にスピードが上がっていきます。
また、続けると子どもの力は格段に伸びます。
同じ時間の中での活動量が増えるので、1年間続けると相当な差が生まれます。
叱って急がせるより、急がざるを得ない環境をつくることで、クラス全体がレベルアップするのです。
③先生の叱る回数が減る
早い子を待たせていると先生はつい遅い子に「早くしなさい!」と叱ってしまいます。
しかし、遅いことは悪いことでしょうか?
元々、人には人のペースがあります。
「周りと合わせられないから叱る」というのは理不尽です。
それよりも、素直に先生についてきてくれる子を褒めます。
そして、遅い子でも急ごうと頑張る時があります。
そのタイミングで、頑張ったことを褒めてあげると少しずつ成長していきます。
叱って一時的に早くしても、それは怖い人に怒られるから動くだけです。
怖い人がいなくなったら元に戻ります。
叱って動かすよりも、褒めて成長させる手段が最善なのです。
遅い子は置いてけぼりなのか?
当然の疑問ですが、遅い子はどうなるのか?という問題があります。
待たないで延々と次の活動に移っていくと、遅い子は授業を受けることすらできなくなります。
待たないといっても、放置はダメです。
そこで、行動が遅い子のために授業展開を工夫する必要があります。
具体的には、遅い子が追いつくまで早い子に別の活動をさせる「時間調整」という方法です。
◆時間調整の工夫
例えば、帰りの準備が非常に遅い子の場合に、
- 帰りの会で音楽を流す
- 帰りの準備が終わった子は歌を歌う
- 全員準備が終わったら終了
とすると、
遅い子は周りが歌い始めるので急いで準備をします。
もし間に合わない子であれば、歌の間に先生は片付けを支援できます。
また早い子は歌っているため、遅い子が気になりません。
結果的に、遅い子は目立たないで帰りの準備を終えます。
このように時間調整は
- 早い子は、次の活動をして成長する。
- 遅い子も、頑張ると同時に周りの子に悪い印象を与えることもなくなる。
というメリットがあります。
早い子も遅い子も負担にならないので、私はこの時間調整の考えを大切にしています。
他にも
めあてが書けた子は、立って音読
→音読をしている間に、遅い子の準備やめあてを書くのを促す。
ノートに自分の意見がかけた子は、黒板に書いて発表
→早い子が活動している間に遅い子にも時間が与えられ、同時に早い子の意見を元に遅い子も意見を書ける。
課題を終えた子から休み時間
→早い子に負担はなく、遅い子も自分のペースで取り組めます。
→支援が必要な子は、そのまま休み時間へサポートにも入れます。
算数の問題演習を早く終えた子
- 黒板に問題と答えを書く。
- ミニ先生となり、友達の丸付けをする。
- 発展問題を用意する。
掃除が遅い班へ役割分担制
行動が遅い集団への対応への応用です。
例えば、掃除の時に廊下掃除の班が遅くて、他の子全員が休み時間に入れない場合「掃除を役割分担性にする」という時間調整もあります。
- 班で、教室の前、右側、左側、後ろ側、廊下など場所ごとの担当にする。
- 自分たちの担当場所を掃除する
- 先生にオッケーをもらったら掃除終了にする。
という方法です。
そもそも「持ち場が終わっても遅い子の手伝いをするのであれば、やる気を失い、ダラダラ掃除をする子が出るのが当然です。
そこで、「持ち場を綺麗にした班から休み時間」とすれば、早く綺麗に掃除することに頑張る意味が生まれます。
やる気を出して、隅々まで綺麗にして「終わりました!」と知らせてくれます。
遅い子をみんなで支えないのか?
上記は一例で「遅い子をみんなで支える」という「助け合いの心」を教えたい場合もあるので、子どもの実態によって変えることが大事かと思います。
子ども同士の関係が育っていれば、遅い子を支えてあげる場面を作ることも大事です。
反対に関係が不十分で、遅い子に対して非難する子がいるのであれば、時間調整を考えることが大事です。
子どもを成長させるには、状況に合わせた方法が必要です。
終わりに
遅い子でも、先生が頑張りを褒めて認め続ければきっと成長します。
そして先生が褒めるから、周りの子も「あの子も頑張っているんだな」と理解し、応援する子に育ちます。
つい先生は子どもに理想を押し付けてしまいますが、彼らは一人ひとりが意思のある人間です。
子どもの立場に立って、今、成長に最も必要物事を考えることが、クラスを成長させ、先生の信頼に繋がっていきます。
参考になれば幸いです(^ ^)
新刊の案内
※新刊が出ました!特支オタクの当HP運営者が、学級経営について全力で研究、実践してみました(^ ^)