不登校の原因と教師の対応

目次
不登校の問題
いじめ、体罰、発達障害など様々な問題に向けての取り組みが日々なされています。
中でも大きな問題に不登校があります。
様々な原因で子どもは学校に通えなくなり、本人の人生にも家族にも大きな影響を与えます。
そもそも「学校が合わない」という子はいると思います。
しかし同時に、
- 合わない子への学びが十分に保証されていない
- 行きたくてもいけない子が大多数
という現状は大きく変わってません。
文科省の調査
平成24年に文科省が、いじめ・不登校に関する調査結果をまとめました。
参考:文科省>不登校
調査によると、20年以上にわたって不登校児童生徒の割合は上昇、ここ10年ぐらいは横ばいとなっています。
これだけ話題となり、多くの人が動いているにもかかわらず現状の改善がみられないのは残念です。
教育に関わる人間として、今回は「不登校を文科省の調査結果をもとに原因を考え、現場はどう対応すれば良いのか?」ということについて、私の意見を書いていきます。
調査結果から見る原因と対策
文科省のデータを見ると、不登校数の推移だけでなく
- 不登校のきっかけ
- 不登校指導に効果のあった方法
が紹介されています
世の中の多くの不登校対策はこの調査結果をもとに行われています。
よって、この調査結果を見て考えていくことが重要です。
以下は、私がデータを見て考えたことです。
私は統計のプロではないので個人的な意見になりますが、ぜひご意見をいただけるとありがたいです。
データの整理
- 不登校のきっかけ
- 不登校指導に効果のあった方法
この2つのデータは重要と感じましたので、整理してみました。
①不登校のきっかけ
以下は、文科省のデータを不登校の原因となった割合が大きい順から並び替えた表です。
参照:平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果
不登校の情緒不安定、無気力など当事者の心理的な問題が大きいことが示されています。
次に親子関係、家庭環境などの家庭の問題
最後に、学業不振などの学校の問題が続きます。
この調査を見ると、
- 本人のケア
- 家庭環境の改善
- 学校の対応
の順番で対応することが良いと思われます。
②不登校指導に効果のあった学校の取り組み
同じ調査に、不登校指導で効果的だった、という取り組み調査もありました。
これも以下に、効果の高い順に並べてみました。
この表からは、学校から家庭へのアプローチが最も効果的であると読み取れます。
その下に学校での取り組みが続きます。
外部機関との連携の効果が低いのは意外でした。
個人的な推察
私がこの表を見て感じたことは、「不登校のきっかけ」と「効果のあった取り組み」のズレがあることです。
通常は「きっかけ」となる出来事にアプローチするのが効果が高いと思われます。
現に、「親子関係」に関するアプローチとして、家庭関係の改善は高い効果を示しています。
しかし、「教師との関係」はわずか3.3%にもかかわらず、「児童と教師の関係改善」は24.2%と高い効果を示しています。
一体なぜでしょうか?
これは、そもそも不登校のきっかけに関するアンケートが、担任による主観での回答だからという原因が大きいと思われます。
担任の先生が「不登校の原因は自分です」とはなかなか書けないですし、気づいてない可能性も高いです。
しかし現実には効果のあった取り組みの24.2%は教師との関係改善なのです。
不登校児の原因は教師が原因?
この教師と児童の関係を意識して表を見てみると、いくつか疑問をもちます。
効果のあった取り組みとして、
- 家庭への電話やお迎え
- 家庭訪問
があります。
これは、元の資料では家庭へのアプローチと分類されていますが、実際は担任と児童の関係改善なのではないでしょうか?
また関係改善は、過ごしやすい学級環境、わかりやすい授業など、広く担任の力量と関係します。
よって「児童と教師の関係改善」の前後にある
- 不登校対応を学校全体で共有
- 児童の意欲が出る活動の設置
これも、児童と教師の関係改善の効果も含まれていると感じます。
このように、見ていくと大きくクローズアップされていないだけで、
教師と児童の関係改善のアプローチが最も効果のある不登校対策なのではないか
と考えています。
そして教師と児童の関係改善とは、そのまま面白い授業や学級経営能力につながります。
具体的な対応
私が上の意見を書いたのは、何も不登校を出してしまう実力不足の教員を悪い、という話にしたいのではありません。
それに今更上言わなくても、教師の力が高ければ不登校にはならないのは当然ですの話です。
また、各自治体を見ても、「魅力のある学校にして不登校を防ごう」という取り組みはどこでも行っています。
しかし、少し前まで現場で働いていた人間としては、教員のスキルを高めて不登校を防ごうという取り組みはできていないのが実感です。
それ以前に、教師は学校運営の事務仕事で忙しく授業準備の時間すら取れないことがほとんどです。
この状況が続く限り、どんなに外部と連携し、家庭にアプローチをしても、不登校児の割合が減ることはないでしょう。
むしろ外部、家庭との連携に時間を費やし、教師自身のスキルアップが計られないので、根本の問題を悪化させることにつながると感じます。
私は、不登校の対策として、様々なスクールカウンセラーの活用やフリースクールなど学校に通えない子へ学びの場を提供するのは非常に大事だと思います。
しかし「不登校を減らす」という目的を掲げるのであれば、
- 大学の教員養成課程を見直す
- 学校へ回す事務仕事を減らす
- 授業時数を減らして、教材研究の時間を確保する
- 過度な行事を減らす
- 過度な部活動の制限
- 授業力の高い教員へのインセンティブ
などの教員の育成環境に資源を投入するのが、最も必要なことです。
教師の負担軽減は長年叫ばれています。
- 不登校
- いじめ
- 学級崩壊
多くの問題が叫ばれますが、根本の原因である「教師の力」に対するアプローチが必要なのではないでしょうか?
国や自治体の予算や資源も限られています。
原因が多様だから色々手を出すのではなく、根本の原因に資源を集中させるのが一番の解決策になるというのが私の主張です。
終わりに
今回は私の思ったことを正直に書いたので、賛否両論あるかと思います。
また、そもそも私のデータに関する意見が全く検討違いであるということはあると思いますので、その場合はぜひ教えていただきたいです。
不登校やいじめなど、子どもたちに関わる問題に心を痛めている人は多いです。
どんな子にも学びの機会のある社会を目指すために、色々なご意見をお待ちしております。
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