いじめ対策ケーススタディ「子どもの持ち物がなくなった」

目次
いじめ対応ケーススタディ
実際にいじめと思われる現場に遭遇したらどうしますか?
「いじめはダメだ」と思っても、具体的な対応で困ってしまう場合は多いと思います。
今回はいじめをなくすという理念を元に、具体的な対応を共有することで、先生方の参考になればと思います。
ケース「鉛筆がなくなった」とクラスの女の子から訴えがあった。
- 時期はクラスにもなれ始めてきた5月の半ば
- 女の子は、元気で明るい子だが少し心配性なところもあった
- 普段はしっかりしている子で、その時点では忘れ物や落し物などはなかった
- 誰かがとったという可能性は0ではないと感じた
みなさんはどう対応しますか?
状況によって色々な対応が考えられますが、以下に私ならどうするか?という視点で対応を書いてみました。
実際に行った具体的な対応
1 事実確認
- なくしたものは何か?
- いつからないのか?
- 可能性のある場所はどこか?
移動教室直後であれば、音楽バッグや理科セットなどの中などにいれたままになっていることがあります。
2 無くした可能性のある場所を探させる
自分でうっかり見過ごしていたというパターンは一番多いので、もう一度探させます。
3 先生も入って、可能性のある場所を探す
「無くした」と思い込んで探しているとかなり見過ごす子が多いので、先生と一緒に確認します。この時点で発見するパターンも多いです。
4 クラスの子ども全員に聞く
先生と一緒に探してない場合は、クラス全員の前で聞きます。
「それならあそこにあったよ」と教えてくれる子は多いです。
5 クラス全員で探す
クラスの誰も知らないとなると、この時点で、いじめの可能性も高まってきます。そこで、クラス全員で授業を潰して探します。(小学校の場合は担任裁量でできますが、中・高校の場合は別の時間を考える必要はあると思います。)
わざと隠した子がいれば、この時点で見つかることが多いです。
(絶対ではないが隠した子が発見することもあります)
6 それでも見つからない場合
- 学年の先生に共有
- 管理職に報告
- 子どもと話して保護者に連絡
をします。
ポイント
◆無くした子(=被害者)に声をかけ続ける
先生が探すのは当然ですが、クラス全員で探している様子を見せ、
「みんなあなたの味方です」
という事実を伝えます。
◆授業の潰し方
授業を潰して探す時は、子どもに人気のある授業を潰します。(体育、図工など)
加害者には「いじめ」は自分が損をするという経験をさせます。
これは、
「いじめ行動が起きたら自分が損をする」
という経験をさせ、加害者と傍観者の意識を変えるためです。
また、全員で探すことにより、自分のしたことの重大さを感じさせます。
いじめ対応で最も重要なのは、被害者でも加害者でもない傍観者の意識改革です。(これは、いじめ研究で判明している最も有効な手段です。)
これは、
「何もしなければ、無関係で安全でいられる」
のであれば、いじめを止められない傍観者になります。
あえて、楽しい授業を潰し、全員で探すことで「傍観者は損をする」という状況をつくることが重要です。
そうすると、次からいじめを見たときに「やめろ!」と声をかけるきっかけになるのです。
「いじめ」は、クラスの多くが傍観者になる場合がほとんどです。
なので、傍観者がいじめに対して「だめだ」と言える指導をすることが、再発防止には非常に有効です。
いじめをしてしまう加害者をいかに、
「クラス全員 対 加害者」
の構図に持っていくかが重要です。
そうしなければ、いじめは止まりませんし、先生の本気度も伝わりません。
一度このような指導をすると、次からのいじめの予防にもなります。
終わりに
かなり現場の感覚で書いているので、もしかするとマイナスな印象をもたれるまもしれません。
しかし、加害者にも事情はあるかもしれませんが、まず教師が
いじめは絶対に許さない
という姿勢をもたなければ、いじめは止まりません。
止まらなければ、いじめられた子の心に深い傷をつけ、その後の人生を大きく左右するのです。
そしていじめを止められるのは教師だけです。
いじめは人の命に関わります。そして教師は子どもの命を預かっています。
授業なんか後回しで良いのです。中途半端なことは絶対にしないようにしましょう。
私個人の意見ではありますが、参考になれば幸いです。
著書ではその他のいじめ行動対応も紹介しています。