一斉指導は本当に時代遅れなのか?

目次
一斉指導は本当に時代遅れなのか?
一斉指導は限界?
日本の小学校では30人以上の一斉授業が多く見られます。
そのため、勉強の苦手な子が授業についていけず、適切な学力の形成が出来ないという課題が長年言われています。
そのため、
- 授業をサポートする支援員制度
- 特別支援学級の充実
- 習熟度別授業
など、より個別・少人数で学習をサポートできるシステムの充実がうたわれています。
これは「一斉授業より個別で見たほうが学力が伸びる」という発想が前提としてあります。
本当に個別指導の方が良いのか?
小学校で担任をしていた時は、一斉授業中心だったので個別指導について深く考えたことはありませんでした。
しかし、現在放デイの指導員として子どもの学習を個別にみると考えが変わってきました。
以下で、色々書いてますが、全て「一斉授業はそこまで悪くないよ」という主張です(^ ^)
◆勉強が嫌いな子
「できないこと」はやりたくないのが人間です。
運動が苦手な子にが「キャッチボールしよう!」と誘っても「嫌だ!」と言われる姿は想像ができると思います。
では、勉強が苦手な子に「勉強しよう!」と誘うとどうなるか?
当然「嫌だ!」となります。
特に個別で学習を見た場合、勉強が嫌な子は
- 「やりたくない!」
- 「こっちならやる!」
と自分ができる簡単な問題を選ぶなど、やらないために徹底抗戦する子も多いです。
「個別に手厚く教えれば勉強もできるようになる」という発想は、あくまで大人からみた発想です。
子どもから見れば「嫌なことに対面」していることに変わりはありません。
◆別の見方
「そうはいっても、集団で無理なら個別のほうがまだ恥もかかないし良いだろう」という考えもあります。
確かに、集団の中で「出来ない」という立場に置かれるのはつらいです。
ただこの考えは別の見方もできます。
「集団の力で子どもを高めるという手段が取れなくなる」ということです。
◆集団で高め合う
子どもは大人より、子ども同士の意見や関係性に大きく影響されます。
運動が苦手な子に、大人がランニングを誘っても断られます。
しかし、運動が得意でない子に「サッカーしよ!」と誘われたら「じゃあやる!」となることは多いです。
「みんながやっている」という環境では、たとえ「苦手なこと」でも抵抗なく始められてしまうものなのです。
◆実力のある先生
実力のある先生は、この「子ども集団の力」を上手に使いこなします。
算数の練習問題に取り組んでいるときに、一人の男の子に
「もう3番までできた。すごい。」
と言えば、周りの子が「何!」「負けない!」「私は四問目!」
と競争心を高めて高いパフォーマンスを発揮します。
発達に困難を抱えて一人で歩き回っているタイプの子も、授業でみんなが盛り上がっていると、「何々?」と近づいてきて授業に参加していきます。
作文が苦手な子も、先生が良い作品を紹介することで「ああやって書けばいいのか!」と理解し、書けるようになっていきます。
「集団での学び」には一人では出せない力を引き出す力があります。
◆個別指導では意欲を高めるのが難しい
現在、個別で学習支援の活動もしていますが、学習意欲が低い子に個別指導で意欲を出させるのは大変です。
- プリントを見ると破いて逃げる
- 勉強の時間になると暴れだす
- 勉強の時間にトイレにこもる
「勉強がわからない」以前に「勉強を始める」までの支援が最も必要とされるのです
その中で、ご褒美作戦、トークンエコノミー、スモールステップ、色々試しました。
そして、最も勉強参加への意欲を高めて、その後の学習効果が高いと感じたのは、「友達と一緒に学ぶ」です。
◆一緒に勉強する
友達と一緒に勉強すると、
- 「負けないぞ!」と競争する
- 「ここわからないの?」と教え合う
- 「頑張ったよね!」と成果を認める
という学習に交流が生まれます。
勉強嫌いな男子A,B
私:宿題の時間だよ
A B:やだ〜
私:どっちが先に始めるかな
A:(すっ)
私:Aくん勝ち
B:俺も!
私:さすが、おっAくんもう終わりそう
B:待てぇぇぇ
私:あ、Bくん抜かした
A:うそっ!負けん!
・・・
30分後普段の課題の3倍やって笑顔で帰宅
友達には負けたくないよね^ ^— 元教員×放デイ指導員ともはる (@m0jJJvFujGoZjdZ) August 4, 2018
↑このような関係を生かした声かけを30人以上いるクラスで行うと、大きな学習意欲の波となって、お互いに高め合います。
一緒に学ぶことで一人では出来ない場所まで行くことが出来るのです。
今後の授業スタイル
現在「反転授業」という考えが広まってきています。
(参考:https://www.huffingtonpost.jp/2013/09/26/flipped-class_n_3993388.html)
- 暗記モノ
- 基礎的な学習内容
などは映像授業で個別に行い、子どもたちが集まる授業では交流、対話的活動、をメインに行い、教師は子どもの意見をつなぐファシリテーターとなる授業形式です。
今後の教育のあり方の主流になると言われいます。
私は今の学校教育が次のステップに変わるとすれば、「反転授業」の形式が一番可能性が高いと考えています。
ただ、基礎的な学習内容の獲得が「映像授業」で全て解決されるか?と問われれば、
映像で一人で進める子もいる反面、子ども同士の高め合いでなければ勉強が進まない子もいると思うので、一斉授業の形式は存在し続けると考えます。
終わりに
(↑今までのまとめ)
個別指導は、勉強が苦手な子の学力を形成する方法として効果があると思います。
個別指導で子どもへ学習意欲を引き出すのは難易度が高いです。
正直に言えば「一斉授業のほうが楽だった・・・」と割と本気で思います
(個人的感想ですが^^;)
一般の方の感覚とは異なると思いますが、一斉授業という1つの技術を学んだものとしては悪くない方法だと思います。
もう少し言うと、
- 学力の中間層からトップ層はむしろ個別や映像授業の活用
- 「勉強が苦手」という層は、集団授業で高め合い
と分けると効果的だな、というのが個人的な感想です。
色々書きましたが、私の主張は学習スタイルを決めるのは大人ではなく、子どもの実態と指導者のスキル両面から判断して決めるべき、というものです。
一斉授業の否定的な面ばかり言われますが、一斉授業にも歴史ある技術が存在するので、良い面も発信していく必要があるかと思いました(^ ^)以上です!