【書評】新井紀子「AIvs教科書が読めない子どもたち」

【書評】新井紀子「AI vs 教科書が読めない子どもたち」
◆AIは東大に合格できるか?
著者である新井さんは、AIが東大に合格することを目指した「東ロボくん」プロジェクトを始めた方です。
その過程で、AIに国語の問題を解けるようにするために、国語の読解力の解明に乗り出します。
しかし、その過程で日本の中学生の多くが、教科書が読めないレベルの読解力であることを発見し警鐘を鳴らす
という内容です。
私は最近の子どもしか関わっていないので、昔からその程度の読解力なのか、それとも最近になって低下しているのか、それはわかりません。
ただ私は「多くの子どもは教科書を読んでも意味を理解できない」というのは前提として考えていたので、むしろそこに違和感があることを再認識できたことは良かったと思います。
◆読解力
本書の主題である「読解力」ですが、東ロボくんを作る過程で作成した読解力テスト「RST」を全国の学校で実施したところ、中学校卒業段階の子どもの約3割が表層的読解ができず、進学校の半数も読解ができなかったそうです。
RSTと同時に生活習慣も調べたそうですが、読書の好き嫌いにこの読解力は影響もしていない、という結果が得られたのは驚きました。やはり読書が好きだと学力に影響することは知られていますので、読解力にも影響していると思っていました。
ただIT業界にいる友人は、「最近はtwitterやブログなど、短い文で理解することが増えているから、昔より人間の読解力は明らかに低下している」と言っていましたし、現に定説になっているそうです。
利便性を追求した結果人間の機能が低下していくのは、ある意味避けられないことなんでしょう。
読解力以前に学校の先生も「国語はどう教えたらいいかわからない・・・」となっている人も多いので、言語レベルで教え方を再定義する方が良い段階に来ているのかもしれません。
日本語学校の先生方の話を聞くと、学校の国語とはまるで違うレベルで教えているので、もっと参考にしても良いと思います。
◆感想
教育はAIで代替できるか?というテーマが話題になることがありますが、当分は大丈夫かなと思います。
これは子どもの育成は生物的に人との関わりが必須になるので、そもそも機械では補えない部分が多すぎるからです。
ただこれからは教育を含めて社会全体がどう変わるのか本当にわからない時代になります。
まずは大人から読解力・生きる力を鍛える必要があるのかと思いました。
また、興味を惹かれたのが、「AIが人間のように知能をもつことなどなく、『シンギュラリティ』も来ることはない」と断言している点です。直接向き合っている専門家がこう思っているのは意外です。(しかし、我々のような庶民は仕事を取られてしまうだけでも一大事なんですが)
いっそ人間が働かなくても全てAIがやってくれる世の中になってくれればいいのに、と思ってしまいます。