【書評】いじめを防ぎたいと願う先生へ 「いじめを生む教室」 荻上チキ【著】

目次
【書評】いじめを防ぎたいと願う先生へ 「いじめを生む教室」 荻上チキ【著】
いじめとはそもそも何か?
いじめに関する話題は長年報道され続けています。
調査によって増えたり減ったりするので、状況が改善しているのかもわかりません。
しかし、一つはっきりしていることは
「学校で起こるいじめは、教師にしか止められない」
ということです。
そして、教師がいじめに関する知識をもっていなければ防ぐことも叶わないでしょう。
まず、「いじめとは何か?」という正確な情報を知り、現状を把握し、対処していくことが必要です。
曖昧な経験則しか知らないと「いじめは無くならない」という最もらしい正論に負けて、子どもの命を諦めてしまうことになります。
今回は、いじめから子どもを守るために知っておきたいデータを紹介している本を紹介します。
いじめを生む教室
本書の荻上チキさんは、NPO法人ストップいじめ!ナビ代表としていじめ研究を続けながら、発信し続けている方です。
そして本書の目的は「エビデンスに基づき、いじめの正体を明らかにする」です。
その目的に違わず、研究されてきた様々なデータをもとに、
- いじめの原因
- 発生しやすい場所
- 効果的な対処法
など、現場の先生がすぐにでも活用できる内容が掲載されています。
目次
- 第1章 これでいいのか、日本のいじめ議論
- 第2章 データで読み解くいじめの傾向
- 第3章 大津市の大規模調査からわかったこと
- 第4章 不機嫌な教室とご機嫌な教室
- 第5章 理論で読み解くいじめの構造
- 第6章 「ブラック校則」調査から見えたこと
- 第7章 ハイリスク層へのサポート
- 第8章 メディアが飛びつくネットいじめ
- 第9章 教員の課題と「いじめ防止法」
- 第10章 大人に求められること
感想
①いじめは「本人の資質と環境要因」に注目する
いじめのあるクラスと、いじめのないクラスがあります。
そこには人の違いもありますが、環境が違うことも挙げられます。
では、いじめが少ない環境とは何か?
それは、「いじめを増やす要因を減らしている」クラスです
いじめ対策は、いじめが起こってからするのではなく
「予防対応→早期発見→早期対応→検証」
を繰り返すことで効果を発揮します。
本書ではそのステップを詳しく紹介しています。
②いじめのホットスポット
いじめが発生しやすい場所は
- 教室(75%)
- 廊下や階段(30%)
- クラブ活動の場所(16%)
とデータから判明しています。
- 先生が職員室に行った瞬間
- 先生の入れ替わりの時間
- 休み時間
などが発生しやすい瞬間です。
このように、ホットスポットがわかると、そこに教師の目をいかに入れて行くか、という対応を取ることができます。
「教師が教室にいる」それだけで、大きないじめ予防になるのです。
③いじめは誰でも経験する。同時に「ハイリスク層」も存在する
国立政策研究所調査では、小学4年生〜中学3年生までの間に、
「9割の子供が一度以上いじめ行為を受けた経験あり」
と報告しています。
そして、「ずっといじめ行為を受け続けてきた」という子も存在していることがわかります。
また、いじめの自死案件では、半数以上の被害者が自死当日7日以内に「死にたい」とほのめかしています。
日常のつぶやきを決して見逃さないことが重要です。
④いじめは環境要因と集団心理
いじめが発生する大きな要因に「ストレッサー説」というものがあります。
これは子供がストレスを発散するときに、発散する場が限られているので、いじめなどの逸脱行動が起きるという説です。
もう少しいうと、学校は、管理社会なので自分にあったストレスの発散方法が不足しており、結果「それなりに面白いいじめ」が発生してしまう、ということです。
つまり、いじめが起こりにくい環境にするには
- ストレス要因の除去
- 子どもの特性に寛容
- 自由度の高い教室
などを意識して作っていく必要があるのです。
終わりに
本書は、1章ごとに大きな問題提起といじめに関する新たな視点を与えてくれます。
本書を読むことで、学級経営を改善する方策も多く出るでしょう。
いじめを防ぎたいと願う先生方にぜひオススメします。(^ ^)